先日親友である星くんの結婚式がありました。
社会人になってから露骨に友人関係の断捨離をしてきた僕。別に嫌いな友人ばっかだから、とかじゃないんです。僕はあんまり他人と会話が続かないタイプというか、僕は昔からクセ強めの人間らしく、誰かといるときに会話を続かせるために本心でないことを言ったり振る舞ったりしてしまいます。
それでも星くんは親友の中の親友として、未だ交友が続いています。星くんは僕の中で割と特別なのです。フランクフルトにいた頃の病んでいたハイジにとってのクララ、あるいはロンにとってのハリーポッターです。この場合は僕がロンです。コンプレックスが強いってところも僕とそっくりですわ。
星くんの前では自然な自分になれるのです。彼も好きですが、彼といる自分も好きなのかもしれません。
まぁそれはいいとして、そして当日、彼の自己紹介の中で聞き捨てならない司会のセリフを聞いてしまいました。
「新郎の星〇〇様は、△△会社の研究職として働いています」
星くんは電気工学系の大学院を出てからずっと研究職なんですね。それは知っていたんですが、
研究職!!!
かっこいい。羨ましい。
彼はいつも僕のコンプレックスを程よく刺激します。
最近僕は会社で昇給を果たしましたが、やってることといえばヘルプデスク、社内SE、マーケティング…まぁ色々あるけれどどれも浅い、つまり雑用です。
研究してるといえばプライベートではクソの役にも立たない実験記事を書いてます。今のところPV数0です。日本の製造業の未来を担う星くんとはワケが違います。自分のは何も背負ってないです。むしろサーバーのメモリの観点でいえばお荷物です。
と、なんだかんだで式は順調に進み食事が出されてきたんですが、
ここで事件が起きました。
先ほどの星くんの紹介によってコンプレックスが刺激されたのでしょう。
コンプレックスを抱くということは心が貧相だということですが、当日はコース料理をあられも無い食べ方で周りをざわつかせました。詳しく説明すると、
↓↓こういう料理が出たんですが、
手ごろなスプーンも傍にあったので
あろうことか、↓↓こんな感じで食べ始めたんですよね。
えぇ。
周りの人から、
「あれ?あいつだけお茶漬け食べてる?」
って思われましたよね。
式場の食事でハフハフ言ったやつは日本初かもしれません。
あと説明していませんでしたが、当日僕はこんなズボンを履いていたんですね。↓
どう考えても縮みすぎですよね。
なんか、そんなことはないですけど、
「お金が無くて7分丈までしか買えなかった人」みたいな感じになってませんかね。
「逆にオシャレかな」と思ってこのズボンのままで行ったのですが
フォーマルな場に「逆に」っていう概念は存在しないんですよね。
スピーチはいつも通りふにゃふにゃ喋っていました。自分の中ではかなり上出来だったんじゃないか?と思って録画してもらったスピーチを聞いたんですが、我ながらミミズみたいな声でしたね。
何はともあれ、親友の結婚式でスピーチまでさせてもらえて光栄でした。僕の中では忘れられない思い出になるだろうと思います。
最後にこんなカタログギフトのカードまでもらいました。
星くんが唯一、僕に送ってくれたプレゼントです。もうプレゼントに変わってしまいましたが、捨てられない思い出の品になってしまいました。
後日、友達と遊びに行った際に友人の船越くんが
「あれ?そのギフトカードまだ注文してなかったの?」
と聞いてきました。
僕は呆れたような顔で、
心の中で肩をすくめながら
(※イメージです)
僕「いやいや。さすがにもう注文したよ」
と答えたわけです。
ギフトカタログはもう注文したけれど、だからってギフトカタログカードの役目が終わったわけではありません。
このギフトカタログは世界で一つなのです。ちゃんと裏にシリアル番号もありますし。
役目が終わったからって捨てるなんて。。。
船越くん「ドビーじゃん」
ドビー?
僕は一瞬何を言われたのか分かりませんでした。
ドビーってなんだっけ?
僕の中の辞書、通称僕ペディアには「○○ー」の固有名詞をとるものは
サリーと
マギーくらいしか思いつきませんでした。
どっちもメルヘンですね。マギーがメルヘンかは賛否分かれるところですが。
ですが次第に僕の脳裏にもう一つのメルヘンが、
メルヘンの重鎮がぼんやりと姿を現してきたのです。
ドビー「ドビーは自由だ」
僕「えっ?君は?」
ドビー「ドビーは妖精だ!」
脳裏のドビーは僕に必死に語り掛けます。
ドビー「ご主人様がドビーめにカタログギフトカードくださった。ご主人様がドビーめにプレゼントを贈ってくださった!ドビーは、自由!」
僕「えっ?ご主人様って?ご主人様って誰だい?」
ドビー「ご主人様は…
星だ」
そこで点と点がつながりました。
僕は星くんにとってドビーだったんだ。
ロンじゃなかった。
僕はハリー(星くん)の、星くんにとっての、ドビーだったんだ。
次第に僕の意識とドビーの意識が溶け合って、混ざっていきます。
ロムー「ロムーは自由だ!」
ロムーは気づきました。星くんに対するコンプレックスは、すべて自分の心の弱さだと。
結婚式のコース料理をお茶漬けみたいに食べるのは、マナーの悪さだと。
ズボンが縮んで小さくなったのは身に着けるものへの関心の薄さだと。
ロムーはダメダメだ。
ロムー「ロムーは悪い子!ロムーは悪い子!」
そして次こそは再び、星くんをフラットな目線で見るのです。
親友にコンプレックスなんて抱いている場合じゃない。
ロムー「なんて美しい場所でしょう… 友達と一緒で… ロムーは友達と一緒で幸せです… ホシ…」
そして溶け合ったはずのドビーは自らの役目を果たして息を引き取る。
僕「そうか、ドビー。君は僕に気づかせるために現れてくれたんだね。友達は大事だということ。コンプレックスはその目を曇らせ、その大事な友達をも失ってしまう可能性があるということを」
そして僕は自分の弱さを受け入れ、ここにきて初めてとある感情に気づく。
僕「ごめんよ、星くん。一番大事なことを言い忘れていたよ。これを最初に言うべきだったけれど、コンプレックスで自分のことしか見えていなかったみたいだ。でも、今なら言える」
僕は大きく息を吸い込んで、伝える。
星くん、結婚おめでとう!!!
おわり